1.動物福祉について
1-1.動物福祉~アニマルウェルフェアとは
アニマルウェルフェアとは、畜産動物に対する福祉を意味します。
「食べるために育てる畜産動物であればどのような環境で飼養しても構わないのか。」
そのような考え方が世界各国に広がっていますが、あまりにも酷い環境で動物を飼育する畜産業者は問題視されています。
どうせ殺されるのだから水も餌も一切与えない、反転することさえもできないケージに詰め込む、そのような飼養方法はアニマルウェルフェアに反します。
食べられる運命の動物であれば、どんな苦痛を与えても良いのでしょうか?
生まれてから死ぬまで、劣悪な環境に閉じ込めたままでも良いのでしょうか?
1-2.5つの自由
アニマルウェルフェアでは、畜産動物に対して5つの自由を保障することが求められます。
①飢えと乾きからの自由
・動物がいつでも水を飲めるようになっているか
・動物が健康を維持するために必要な食餌と栄養を充分に取れているか
②物理的な不快からの自由
・動物が適切な環境下で飼育されているか
・動物が生活している環境は常に清潔な状態が保たれているか
・動物が生活している環境には風雪雨や炎天を避けられる場所があるか
・動物が快適に休息できる場所があるか
③外傷や疾病からの自由
・動物に外傷がある場合や、痛みや疾病の徴候を示している時には、適切な治療が行なわれているか
④恐怖や不安からの自由
・心理的苦痛を避ける状況、及び取り扱いは確保されているか?
⑤正常な行動を表現する自由
・動物が正常な行動を表現するための充分な広さが与えられているか
・動物が実行したいと思った自然な行動を取れる機会は与えられているか
1-3.バタリーケージとは?
バタリーケージをご存知でしょうか?
バタリーケージとは、採卵用のニワトリを入れる金網でできたケージです。
幅が 15 センチしかないケージは、足元までもが金網でできていて、ニワトリたちは方向転換することもできません。
金網は卵が転がりやすくするために、前傾の状態で設置されています。
ニワトリは体とちょうど同じ大きさの金網の中で、毎日卵を産み続けています。
バタリーケージは日本では未だに使用されていますが、EU ではすでに法律で使用が禁じられています。
ニワトリは本来は、日の出と共に羽ばたきをして、毛づくろいをし、砂浴びをして羽をきれいにし、一日に 1 万回以上地面をつついて採食する動物です。
安全な巣の中で卵を産みたいという本能があり、止まり木で眠ることを好みます。しかしバタリーケージの中では、それら全ての欲求を叶えることはできません。
また、バタリーケージによる過密な飼育によるニワトリのつつき合いを防ぐために、ニワトリは雛の段階で麻酔なしでクチバシを切断されます。
2014 年時点の調査では、日本の養鶏場の 83.7%でクチバシの切断が行われていることが分かりました。
どうせ殺される動物であれば、どんな扱いを受けても仕方ない、このような考え方は本当に正しいと言えるのでしょうか?
ニワトリのバタリーケージのように、豚や牛のような畜産動物に対する扱いも近年では社会問題として指摘されています。
1-4.日本の食鶏場の現状
日本の鶏の屠殺場では、鶏を逆さ吊りにした状態で、オートキラーと呼ばれる機械式のナイフで首を切断しています。
この時、暴れて動き回った鶏の中には、首を浅く切られたり、全く切られなかったりする鶏もいます。
首を完全に切断された鶏たちは、2~3 分の間吊るされたまま血抜きをされます。
しかし浅く首を切られてしまった鶏たちは、意識を保ったままただひたすら痛みに耐え抜いています。
その後、拘束されたままの状態の鶏たちは、60 度の熱湯に入れられます。
意識のある鶏や首を全く切られなかった鶏たちは、叫び、羽をばたつかせて暴れます。
ところが、首を完全に切断されなかった鶏たちは、血抜きが不完全であるため食肉として流通はしません。
つまり、痛みや熱湯の熱さの中で死んでいった鶏たちは、食べられることもなく無駄に廃棄されているのです。
EU ではこのような屠殺方法が禁じられていて、ガスや電気で意識を失った状態で首を切断しています。
少しでも痛みを和らげ、血抜きが不完全で廃棄される鶏を最小限に減らすためです。
イギリスとスウェーデンでは、首を切られずに生きたまま熱湯で茹でる行為は法律違反になります。
また、アメリカでは鶏の処理数が日本の 10 倍に上りますが、首を切ることに失敗して生きたまま熱湯で茹でられる鶏の羽数は日本の 10 分の 1 程度です。
この数字は、いかに日本の屠殺場において管理がなされていないか、アニマルウェルフェアの観点が欠如しているかということを表しています。
1-5.アニマルウェルフェアにおける日本の評価
日本の畜産動物に対する福祉の考え方は、動物愛護先進国である EU はもちろんのこと、中国やフィリピンにも劣っていると言われています。
つまり、動物愛護やアニマルウェルフェアにおいては、日本は世界各国の中でも後進国と位置付けられています。
2014 年、日本の農林水産省の公式ページでも、アニマルウェルフェアに関する記述が追加されました。
2016 年には、農林水産省から各県に対し、生産者自らがアニマルウェルフェアの取り組みを進めるよう指導要請されました。
2019 年の東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村で提供される食事など大会で使用される畜産物の調達基準として「快適性に配慮した家畜の飼養管理」を要件に入れることを決定しました。
諸外国に遅れをとっている日本のアニマルウェルフェアですが、これから少しづつアニマルウェルフェアの考え方は広がっていくでしょう。
1-6.消費者のわたしたちに今できること
牛や豚、そして鶏肉は、ずっと昔にはとても高価なものでした。
しかし現代では、安い値段でたくさんのお肉が手に入るようになりました。
その影には、経費を削減するために劣悪な環境で飼育されることを強いられている動物たちがいます。
わたしたちが安い価格で大量のお肉を食べ、廃棄しているために、家畜たちは麻酔なしで体の一部を切断されたり、身体と同じ大きさのスペースしかない檻の中で何年も生活しているのです。
命を頂いている動物たちに少しでも敬意を払うために、わたしたちが今すぐにできることがあります。
食肉の無駄な消費を減らし、廃棄だけは絶対に避けることです。
また、最近では平飼い卵という言葉が広く知られるようになりました。
平飼い卵とは、檻の中ではなく放し飼いにされた鶏から採卵された卵のことです。
スーパーでのお買い物の際に少し考えるだけで、多くの動物たちが救われていることを覚+えておきましょう。
2.動物愛護管理法について
動物愛護管理法は議員立法で制定された法律です。
動物虐待は犯罪であり、法により裁かれます。
また、動物を販売するにあたっては、動物愛護管理法に従い適切な対応をとる必要があります。
2-1.動物虐待に対する処罰
➢ 愛護動物への殺傷は 2 年以下の懲役または 200 万円以下の罰金。
➢ 遺棄・虐待に関しては、100 万円以下の罰金。
2-2.8 週齢規制とは
生まれてから 8 週間(56 日)経たない子犬や子猫を販売したり、ペットショップに引き渡すことは、法律により禁じられています。
生まれてからの 8 週間は、子犬や子猫が社会性を身につける大切な期間です。
子犬や子猫のあいだにお母さんのお乳を飲むことで、大人になった時に強い体になります。
子犬や子猫の時代にお乳を飲まなかった犬猫は、病気にかかりやすいことが分かっています。
また、お乳を飲む時に歯で強く噛むと、お母さんは痛いからやめるように躾けます。
これにより犬や猫は、強く噛むと相手を傷つけるということを覚えます。
8 週齢規制を守られずにお母さんと引き離された犬猫は、将来病気にかかりやすくなったり、人間や他の動物に対して攻撃的になることが分かっています。
また、8 週間のあいだに兄弟と共に過ごすことで、犬や猫は社会性を身につけています。
じゃれ合ったりケンカしたりする過程で、相手が痛がることや怒ることを覚えます。
そのような機会を奪われた犬猫は、人間に対しても攻撃的になることが多くなります。
3.ペット流通について
ペットショップに並ぶ犬猫を見て、この子達はどこからやってきたのか、母親はどこにいるのか、想像してみたことはありますか?
2015 年度の統計によると、販売用に流通した犬猫の 3%にあたる約 2 万 5 千匹が、流通過程で死んでいたことが判明しました。
また、ペットショップで売れ残ってしまった犬猫はどこへ行くのでしょうか?なんとなく想像できる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アメリカのカリフォルニア州では、2019 年 1 月以降、商業目的で繁殖された犬・猫・ウサギの販売が禁止されました。
最大の目的は、動物の販売をやめることで殺処分を減らすことです。
現在カリフォルニア州では、ペットを飼うには保護施設からの引き取りが一般的になりつつあります。
そのような施策によりカリフォルニア州ロサンゼルスでは、8 年間でおよそ 85%も殺処分を減少させることに成功しました。
3-1.繁殖業者について
海外では動物の繁殖業者に規制が設けられている国がたくさんありますが、日本では届出さえ済ませれば誰にでもブリーダーになることができます。
正しい知識を持たないブリーダーや、動物への配慮を気にかけないブリーダーは、遺伝病や近親交配のリスクを動物に負わせ、ペットショップの需要に応えようとします。
過去には悪徳ブリーダーが摘発された例もあり、劣悪な環境下で度重なる繁殖を強要させていました。
悪徳ブリーダーはパピーミルとも呼ばれていますが、直訳すると「子犬工場」を意味します。
営利を目的として費用を極限まで抑え、動物を大量に繁殖させている悪質なブリーダーのことを指します。
ボランティア団体によってパピーミルから救われた犬の中には、2 年間で 6 回の帝王切開をされていた犬もいました。
ペットショップの需要に応えるために、動物の身体の負担を考えずに繁殖を強要する。
お金を出して動物を買うことの裏側には、そのような犠牲になっている沢山の動物たちがいるのです。
3-1-1.イギリスの繁殖業者
イギリスでは、動物の繁殖においてブリーダーに以下のような規定が設けられています。
➢ 1 歳に達しない雌犬には繁殖させてはいけない
➢ 6 回を超えて出産させてはならない
➢ 最後に子犬を出産した日から 1 年以内に出産させてはいけない
日本では上記のような法の整備が未だに進んでいません。
3-2.引取り屋について
数年前の日本では、ペットショップで売れ残った犬猫は保健所に持ち込まれるのが一般的でした。
しかし平成 25 年に施行された改正動物愛護法により、繁殖業者や販売業者からの動物の引き取りを自治体が拒否できるようになりました。
しかし、センターが繁殖業者や販売業者からの動物の引き取りを拒否できるようになると、山や河川敷での動物の大量遺棄が増加しました。
また、お金をもらって売れ残った動物を引き取る「引取り屋」というビジネスが生み出されました。
お金になるならどんなことでもする、お金にならない動物は処分する、わたしたちが暮らす世界には、今もこのような闇が存在します。
売れるから商品を増やす、売れないなら処分する。動物には体温があり、人間と同じように生きています。
3-2-1.引き取り屋によるネグレクト事件
2017 年、栃木県矢板市内で犬猫の「引き取り屋」をしていた男性が、狂犬病予防法違反で書類送検されました。
この事件で明るみになったのは狂犬病予防違反だけではなく、引き取り屋によるネグレクト(飼育放棄することによる虐待)でした。
保護団体により公開された写真には、身体の倍の大きさしかない檻に入れられた犬が、色が変わるまで放置されたままの排泄物と一緒に写っていました。
病気にかかった動物に、適切な治療を受けさせなかったという事実もありました。
収容されていた犬猫の中には、長期的な寒さと栄養失調により、救出後まもなく死亡した犬や、視察時にすでに死亡していた犬もいました。
3-3.動物園について
動物園にいる動物たちは、どこからやってきたのでしょうか?
ストレスでぐるぐると床を回り続ける動物や、短い鎖で繋がれたままの動物を見て、あなたは何を感じますか?
照明を照らされたまま明るい店内に 1 日中置かれている夜行性の動物。
日よけのない暑い屋外に展示され、餌やりをされ続けるヤギや豚。
子供と動物のふれあいの名の下に、適切な取り扱いの指導もないまま無造作に掴まれる小動物たち。
大人が子供たちに対してやるべきことは、動物と触れ合うことを通して、命の尊さを伝えることではないのでしょうか?
ルールも指導もない動物の展示では、むしろ動物の命を軽んじることを教えてしまうのではないでしょうか。
3-4.変わりつつあるペットショップの新しいカタ
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ペットショップと言えば動物を買うところ、そのようなペットショップの形は、もはや過去のものになろうとしています。
岡山県にあるペットショップ chou chou では、2015 年の春より動物の生体販売をやめ、保護犬の里親探しの事業をスタートさせました。
chou chou を運営する株式会社グロップの責任者によると、ブリーダーにより多くの犬が生産される中、膨大な数の犬が殺処分されていることに以前から矛盾を感じていたそうです。
犬猫の殺処分をなくすためには、命の売買という根本の問題から変えていかなければならない、その想いから株式会社グロップは生体販売を取り止めることを決断しました。
ペットを売らないペットショップなんて、ビジネスとして成立するのか?当然の疑問です。
ところが、chou chou がペットの販売を止めてから、売り上げは毎年伸び続けているそうです。
ペットを売らないことに共感した全国のペット愛好家たちが、chou chou の活動を応援すべく、ペット用品を買ってくれるようになったそうです。
2015 年秋には、千葉県市川市で動物病院とペットショップを経営する企業を傘下に収めました。
ここでもやはり動物の販売を取り止めて、命を売るのではなく里親探しをするお店に転換しました。
少しずつではありますが、動物をに値段を付けて販売する社会に疑問を持つ人が増え始めています。
一方で、動物愛護センターやボランティア団体の保護施設には、新しい家族を待っている犬猫がたくさんいます。
その中には、殺処分による命の期限が迫っている子達もいます。
動物を家族に迎える際には、保護犬や保護猫の里親になるという選択肢も考えてみてください。
全国の生体販売をしないペットショップ
➢ 岡山県岡山市 chou chou
➢ 千葉県市川市 アニマルライフ
➢ 大阪府大阪市 ペミリー
➢ 沖縄県中頭郡 ペットボックス北谷店
4.殺処分について
環境省は平成 25 年「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」を立ち上げ、将来的に殺処分を 0 にすることを目標に掲げました。
環境省による平成 29 年の統計では、動物愛護センターによる犬猫の引取り数は 100,648 匹です。
そのうち殺処分となった犬猫は 43,216 匹、毎日 100 を超える動物たちが殺され続けていることになります。
沖縄の宮古島のような離島では、殺処分のための施設がないために、近隣の施設まで空輸された上で殺処分されています。
動物の殺処分にはたくさんの税金が使われているのです。
殺すためにお金を使うのではなく、生きるためにお金を使ってほしい。殺処分がなくなることは、私たちの切実な願いです。
4-1.飼い主による動物の持ち込み
保護センターに引き取られた 100,648 匹のうちの 15,261 匹は、信じがたいことに飼い主が自ら持ち込んでいます。
飼い主からの持ち込み理由は「引っ越すから」「子供がアレルギーだから」「自分が高齢になり面倒をみられなくなった」「ペットが病気になった」「ペットが高齢になった」などが多くなっています。
そしてさらに信じがたい理由として「トイレを覚えない」「鳴き声がうるさい」「可愛くない」「子供が飽きた」などもあります。
犬や猫はぬいぐるみやおもちゃではありません。
わたしたち人間と同じように痛みを感じる生き物です。
不要になったからセンターに持ち込んで殺処分してもらう、とても悲しい非人道的な行いと言わざるをえません。
ドイツでは、治る見込みのない病気やけがで苦しむ動物を除いては、殺処分してはならないと定められています。
日本の対応はドイツに比べて大きく後れを取りますが、2013 年に施行された改正動物愛護法では、自治体が動物の持ち込みを拒否できるようになりました。
これにより「飽きたから」など無責任な理由により、動物をセンターに持ち込むことはできなくなりました。
しかし依然としてセンターに犬や猫を持ち込もうとする人がいるのが現状です。
一方でペットショップでは、人間の手によって繁殖された犬や猫が売られていきます。
ペットを家族に迎える時に保護犬や保護猫を選ぶことで、一つの小さな命が救われるということを知って頂けたらと思います。
4-2.動物を家族に迎える前に
動物を家族に迎える時には、その命が終わるまで育てるという責任を持つことが大切です。
15 年~20 年という長い年月に渡り世話をする覚悟や、金銭的な負担があることもよく理解してから動物を家族に迎えることが大切です。
動物を飼い始める前には、以下のようなことを確認した上で、もう一度よく考えてみましょう。
・動物の終生飼養は動物愛護法で義務付けられています。犬や猫が高齢になり介護が必要になっても、最期まで面倒を見られますか?
・犬猫を家族に迎えると、食費や定期的なトリミング、医療費、あらゆるペット用品や設備費がかかります。犬猫がその命を遂げるまで、あなたはそれらの費用を負担しつづけることができますか?
・ペットが起こしたトラブルは飼い主の責任です。万が一人のトラブルの場合、根気よくしつけをして状態を改善することができますか?
・引越しをすることになった場合、ペット可の住宅を探すことはできますか?どうしても引越し先に連れていけない場合は、責任を持って良い里親さんを探せますか?
犬猫が命を終えるまで責任を持って飼養することは、法律により義務付けられています。犬猫を家族に迎える前には、もう一度上記の点について考えてみましょう。
5.動物虐待について
動物虐待はれっきとした犯罪です。
また、餌や水をしっかりと与えずに衰弱させたり、捨てたりすることも同様に犯罪であり法律で罰せられます。
愛護動物への殺傷は 2 年以下の懲役または 200 万円以下の罰金、遺棄や虐待に関しては 100万円以下の罰金が科されます。
動物は声を上げることができません。
近くで起きている動物虐待に気づいているのに見て見ぬふりをしていては、動物はこれから先も虐待に耐え続けるしかありません。
恐怖と痛みに怯えながら、ただ生きていくしか方法はありません。
あなたの勇気ある行動で、近くにいる動物たちを救うことができます。
身の回りで動物虐待を見かけたら、必ず警察か保健所に通報しましょう。
5-1.動物虐待の過去のケースと司法の対応
5-1-1.埼玉県さいたま市の猫虐殺事件
2017 年 9 月、埼玉県さいたま市の税理士、大矢誠容疑者(52)が動物愛護法違反の罪で起訴されました。
大矢誠容疑者は 2016 年頃から、熱湯をかけたりガスバーナーで焼くなどして、猫 13 匹を虐待、少なくとも 3 匹の猫を殺害しました。
大矢誠容疑者はその他にも熱湯に猫を沈めたり、耳の中に熱湯を注いだりして虐待しました。
5-1-2.千葉県成田市の派遣社員の男による猫虐殺事件
2017 年 8 月、子猫の虐殺動画を動画に載せた男が逮捕されました。
男は子猫を粘着テープで縛った上で、血が出るまで肛門をティッシュペーパーで強くこすり続けたり、激辛のチリソースを付けた綿棒を口の中にねじ込んだりしました。
さらに両前脚をガムテープで縛り上げ、胴体を強く握りしめて殺害しました。
子猫は胴体を強く握りしめられると悲鳴をあげて亡くなったようで、男はその時の様子を得意げに綴っていました。
このように残酷な動物虐待が実際に行われていたにも関わらず、現在の日本の法律や司法では実刑となることはほとんどありません。
動物愛護管理法の第一条には「動物の虐待及び遺棄の防止」と明記されていますが、懲役刑が下されるケースは稀です。
動物への虐待や殺害は再犯率が高く、その他の犯罪へとエスカレートしていくことも多々あります。
そのように危険で異常な犯行であるにも関わらず、犯人には執行猶予が付けられています。
一方で米カリフォルニア州では、2015 年に起きた連続動物虐待死事件で、容疑者の男に懲役 16 年の実刑が下されました。
5-2.動物虐待をなくすためにできること
5-2-1.動物虐待への厳罰化
日本の動物愛護管理法の第一条には「動物の虐待及び遺棄の防止」と明記されていますが、懲役刑が下されるケースは稀です。
愛護動物への殺傷は 2 年以下の懲役または 200 万円以下の罰金になりますが、実際にはそのような刑が下されることはほとんどありません。
動物を虐待してもたいした罪には問われない、犯人の甘い認識を覆すことが動物虐待を減らすための第一歩です。
5-2-2.警察の権限強化
不適切な飼い主には飼育禁止命令、業者に対しては業務停止命令を速やかに出せるよう、警察や行政に権限を与えることが必要です。
また、動物たちを虐待から守るアニマルポリスの設立が必要です。
5-3.ネグレクトについて
ネグレクトとは、世話を放棄することや怠ることを言い、動物虐待の一種として定義されて
います。
➢ 病気の動物を病院に連れて行かない
➢ 外につなぎっぱなしで散歩に行かない
➢ ケージに入れっぱなし
➢ 世話は餌と水だけ
上記のような行為はすべてネグレクトにあたります。
責任を持って世話をできないと思うのであれば、動物を飼わないというのも一つの選択肢です。
動物は飼い主を選ぶことはできません。
私たちが、しっかりと世話をして愛情を注いでくれる飼い主を選んであげることも大切です。
5-4.多頭飼育崩壊について
不妊去勢手術をしないまま猫を飼い続けていたら、いつのまにか 50 匹にまで増えていた…
このような多頭飼育崩壊の事例は全国的に多発しています。
猫はテリトリーを持つ生き物であり、一つの家で暮らせる頭数には限りがあります。
一つの家で数十匹の猫が暮らしていると、弱い猫が餌を食べられずに餓死したり、強いストレスで体を壊す猫が出てきます。
増え続ける猫に対処できなくなり、無責任に全てを放り出す飼い主もいます。
不妊去勢手術のない多頭飼育では、猫を幸せにしてあげることはできません。
命あるものを飼うということ、育てるということは決して簡単なことではありません。
ペットを家族に迎える前には、ペットを飼うということを理解した上で覚悟を持つことも必要です。
あるいはペットを飼わないということも、不幸な動物を増やさないための一つの方法です。